最近、上司と一緒に仕事をすることがまた増えた。
それが、嬉しい。
ものすごく嬉しい。
……そして、ちょっと困っている。
なぜなら私は、どうやらこの人のことが、かなり好きだからだ。
上司は、もともと私にとって「仕事ができて、頼りがいがあって、判断力があって、話をちゃんと聞いてくれる人」だった。
しかも優しい。
気遣いもある。
私のことをちゃんと見てくれて、気にかけてくれる。
ただ、これは別に私だけに特別優しいわけではない。
上司はほかの人にも優しいし、親切だ。
それはちゃんと分かっている。
分かっているのに。
自分のことを気にかけてもらえると、嬉しすぎる。
「私のこと、ちゃんと見てくれてるんだ」
と思ってしまう。
好きな人にそんなことされたら、そりゃ舞い上がる。
そして最近、さらに困ったことがある。
上司の顔が、可愛く見えて仕方ない。
かっこいい、ではなく。
可愛い。
なんというか……ハム太郎みたいなのだ。
(ちなみに、顔だけじゃなくて、動きもハム太郎みたい)
頼れる上司なのに、顔を見ると「かわいいなあ」と思ってしまう。
もう完全に脳内でハム太郎化している。
しかも、どんどん可愛くなる。
好きになるほど、どんどん可愛く見えてくる。
そして私は、その「可愛い」という気持ちを隠そうとする。
バレたら恥ずかしいから。
結果、どうなるか。
めちゃくちゃ他人行儀になる。
話しかけられても、なんかよそよそしい。
目を合わせようとしても、
「すき……」
と思ってしまいそうで、つい目を逸らす。
見たいのに、見られない。
普通にしたいのに、普通にできない。
何をしているんだ、私は。
たぶん、好きな人を前にした人間の典型的な挙動である。
しかも最近は、ただ「可愛い」だけでは済まなくなってきた。
大好きなのだ。
もう、
「よしよししたい」
とか思っている。
お腹ぽよぽよしたい、とまで思っている。
完全に愛でる対象になっている。
私はいったい上司を何だと思っているんだろう。
ハム太郎か。
でも、ここで一応ちゃんと冷静な自分もいる。
上司はほかの人にも優しい。
私に対する態度が特別なわけではない。
「独身だから、もしかして私にも可能性があるのでは?」
なんて考え始めたら危険だ。
独身だからといって、私に可能性があるわけではない。
そこは分かっている。
……分かっているのだけど。
独身なんだよなあ。
だから、変に期待しちゃう。
いっそ既婚だったらよかったのに、と思うことすらある。
既婚だったら、最初から「対象外」として諦められる。
でも独身だから、
「もしかしたら」
という余白が残ってしまう。
その余白が、恋心を育てる。
そして私は、また好きになる。
ちなみに、好きになりすぎないように、以前は上司の欠点を探そうとしたこともあった。
「これ以上好きになったら困るから、冷静になろう」
と思って。
でも、うまくいかなかった。
むしろ最近は、
「ここはちょっと嫌だな」
と思うところも出てきた。
いわゆる蛙化もしている。
好きなのに、たまに「うーん、今のはちょっと……」と思う。
でも、そのあとまた、
「でも可愛いんだよなあ」
となる。
好き。
ちょっと嫌。
やっぱり好き。
可愛い。
蛙化。
でも大好き。
忙しい。
人を好きになるって、こういうことなのかもしれない。
ずっと相手の全部が好きなわけじゃない。
「ここは好き」「ここはちょっと苦手」があって、それでも全体として、その人といると嬉しい。
そういうものなのかもしれない。
だから今は、無理にこの気持ちを消そうとは思わない。
好きなものは好き。
可愛いものは可愛い。
ただし、現実ではちゃんと仕事をする。
上司に向かって、
「よしよししたい」
なんて顔には出さない。
目を逸らしてしまっても、できるだけ普通にする。
優しくしてもらったら、素直に嬉しがる。
でも、その優しさを「特別な意味がある」とは決めつけない。
好きな気持ちは好きな気持ちとして、私の中に置いておく。
そして今日も私は、
「この人、かわいいなあ」
と思いながら、
何食わぬ顔で仕事をする。
たぶん、今の私にできるのはそれくらいだ。
……しかし。
分厚い唇まで可愛いと思い始めているので、平常心を保つのはなかなか難しい。
ハム太郎、恐るべし。